飲食費不正請求 2

不正監査事例

自宅近くの飲食店で有給取得日に接待?

会社では、社員同士の飲食費を、親睦とか打合せとかいう名目で会社に請求することがあります。

今回は、ある事業部門の幹部社員の事例です。

仮にBさんとします。

彼のことを調べようと思ったのは、彼の飲食費用の精算額が、ある時点で会社全体のトップだった為です。

データを見始めてすぐ2つの点が気になりました。

ひとつは、ある和食店の利用回数がとても多いことで、複数の得意先の接待に使用しているのですが、その店がBさんの自宅の近くにあることでした。

こうした調査では、対象者の人事情報も入手し、職務経歴や住所・家族状況といった個人情報なども一応目を通します。

領収書に記載されている店の住所を見たとき、彼の自宅と近いことに気づいたという訳です。

接待ならば相手先の希望や利便を第一に考えるのが普通です。

自分の家に近いことを優先して店選びをするというのはあまり考えられません。

勿論、自宅そばに人知れぬ名店があり、得意先に喜んでいただくために使うこともなくはないでしょうが。

更に不審だったのは、出勤データと付け合わせたところ、Bさんが休暇を取得した日にも何回か接待を行っていたことになっていた点です。

そして、領収書は手書きのタイプで、日付の筆跡が何となく不自然にも見えたのです。

二点目は、六本木の、とあるフレンチ料理での接待データで、そのお店のホームページのメニューから推測される客単価と、精算データの客単価に大きな乖離があったことです。

この2点について、周辺の社員に内密にヒアリングを行う等、更に調査を進めることとしました。

日付を抜いた領収書

結果です。

和食料理店については、接待で使ったこともあったものの、実際は半数以上が社員同士の飲食で、更には、Bさんが家族と行った飲食まで含まれていました。

実際に店に行ってみてわかったのですが、領収書をもらうときにお願いをすると、日付欄を空欄にしてくれるのです。

そして、家族とは主に週末に飲食していたのですが、平日の日付をBさんが書き入れていたそうです。

それを、他の領収書と一緒に月に一度まとめて秘書に渡し、会計データに入力をさせていたのです。

自分が休暇をとっていた日については、本来、別の日付で申請すべきだったのを、平日だった為、うっかりそのまま本当の日付にしてしまったとのこと。

家族との私的飲食を会社に請求したのは勿論100%アウトですし、社員同士の飲食費を得意先接待費として精算するのは予算の不正流用にあたります。

高級フレンチで女性部下と2人で食事

フレンチについては、合計3回の利用があったのですが、いずれも部下の女性社員と2人で行っていたことがわかりました。

相手はその都度違っていて、3名ともBさんと同じ事業部の若い社員でした。

男女関係にあったという訳ではなく(女性側にもヒアリングをしこの点は間違いないと思われました)、仕事を頑張っていることのご褒美に高級店に連れて行ってあげたとのことでした。

しかし、単価が4-5万円もした為、相手を得意先と偽り、しかも人数を水増しして単価を下げる、つまり2重に虚偽の申請をしていたのです。

罪の認識

Bさんは辞表を提出しようとしましたが、認められず、懲戒解雇という結果になりました。

この人はまだ40代で、営業成績が抜群、同期の中ではトップランナーだったので、惜しい限りです。

監査部は、不正調査はしますが、処分を決めるのは人事部です。

ですので、聞き取り調査時点では解雇になるかどうかはわかっていなかったのですが、虚偽申請した精算金額は返金してもらうことになるだろうとは伝えました。

その際のBさんの反応は、「これだけ会社の業績に貢献してきたにもかかわらず、そこまでしないといけないんですか?」という、私にとってはかなり意外なものでした。

家族との食事代は仕方ないにしても、それ以外は仕事だという認識だったようですが、つまりは自分のやったことの罪をその程度にしか認識していなかったようです。

一般的に、社内処分を受ける人は、やったことに対して処分内容が重いと感じる場合が多いようなのですが、後日解雇の通知を受けたときは一層大きなショックだったのではないでしょうか。

Bさんの認識、皆さんはどのように思いますか?

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