英語・フランス語・中国語。3つの外国語を習得できた理由

語学・海外情報

3つの外国語の学習歴とレベル

私は、母国である日本語以外に、英語、フランス語、中国語の3つの言語を話せます。

それぞれのレベルと、学習歴は、以下のとおりです。

〇英語
 ・アメリカに5年駐在
 ・帰国後すぐに受験したTOEIC(LR)で975点獲得(LR:Listening, Reading)
 ・英語での打合せ、会議参加、プレゼン実施等、問題なし

〇フランス語
 ・フランスに2年弱駐在(時期的にはアメリカ駐在よりこちらが先)
 ・駐在当初、約半年間、仕事をせず、ホームステイしながら語学学校通い
 ・その後は、現地の子会社でフランス語を使って仕事。日本人出張者と現地社員の間の通訳も担当

〇中国語
 ・中国語使用エリアの居住歴はなく、学習は国内のみ。学習期間は2024年末時点で約9年
 ・2022年に中国語検定(中検)準一級を取得
 ・現在は中国人の家庭教師と週一で会話練習。政治・経済・文化等幅広い話題について普通に会話可能

日本では英語は義務教育でもあり、帰国子女などネイティブとほぼ遜色ない人まで含めて、私程度に話せる人は沢山います。

しかし、それ以外の言葉を使える人となると、いきなり少なくなるのではないでしょうか。

まして、3カ国語(どの言語かは別にして)をこの水準で習得していることには、かなりの希少価値があるのではないかとうぬぼれています。(因みに、複数言語を話せる日本人の人数についてのデータがないかをネットで調べてみましたが、見つけられませんでした。)

”なぜ3カ国語も話せるんですか?”と聞かれることもよくあります。

今日は、私が3つの言語を習得した経緯と、その経験を通じて考える”語学習得に必要な3つの肝”について書いてみます。

現在語学の習得に取り組んでいる方に、多少の参考になればと思います。

フランス語

最初に話せるようになった(と人前で言えるくらいのレベルになった)外国語はフランス語で、きっかけは28歳のときのフランス駐在です。

上司から転勤の内示を受けたときは、正直、うれしい気持ちと心配がないまぜになった複雑な心境でした。

元々海外駐在を希望しており、その点はうれしかったものの、私の会社では、フランスのみ社内公用語が英語でなく、駐在員にはフランス語能力が必須だったからです。

何故フランスだけ例外だったかというと、当時のフランス人は英語に対する反発意識が強く、社内の公用語を英語にしてしまうと、現地での採用がままならなかったことによるようです。

その為、話せない場合は、まず半年程度、現地でホームステイしながら語学学校へ通うことになります。

費用は全て会社持ちで、その間、仕事はしません。

ありがたい話ですが、そのかわり、半年で最低限の会話が出来るようになることを要求される訳です。

モノにならなければ、国際分野では不適格と見なされて、それ以後、関連の仕事ができる可能性が下がってしまうことも懸念されました。

ゼロからのスタートでしたが、結果としては、幸いなことに、学校での勉強期間を終えて現地法人に着任したときには、何とかフランス語で仕事ができるレベルになっていました。

”何とか仕事ができるレベル”というのは、一対一の会話なら、相手の言っていることをほぼ理解できるし、こちらの意図も伝えられる、といったところです。(フランス人同士が通常スピードで話していると、今でも、ほとんど聞き取れませんが。)

たいしたレベルではないのですが、半年前までは、それこそ一言も話せなかったことを考えると、結構な達成感がありました。

通っていた学校のメソッドが良かったのもあると思いますし、”ホームステイ”という環境もとても役立ちましたが、個人的な学習方針として、文法よりも、語彙力に重点を置いた点も、結果として正解だったと感じています。

通っていた学校には、色々な企業から派遣されてきた日本人がいましたが、ゼロから始めたメンバーの中では、私が一番話せました。

これが、自分の中では一種の”語学学習における成功体験”になりました。

英語

フランスから帰国し、本社でいくつかの仕事を経験した後、30代後半で再度海外駐在の内示が出ました。

今度は、アメリカの子会社の責任者のポジションを任せてもらえることになり、冒頭にも書いたとおり、結果的には5年間アメリカで過ごすことになりました。

アメリカに5年もいれば誰でも英語ができるようになるだろうと思われる人もいるでしょうが、現実は必ずしもそうではありません。

何年いても、英語を学ぶ努力をせず、本社との連絡や日本人どうしの仕事ばかりをして、一向に英語が上達しない人も少なくないのです。

そんな中で、私は、赴任前に700点台前半だったTOEICのスコアを、帰国時には975点まであげることが出来ました。

これには、フランス語の習得経験を通じて得た、語彙力に重点を置く学習方法と、何より、努力を続ければいつかはものにできるという自信のお陰で、勉強を続けるモチベーションを保てたことが、非常に役立ったと思います。

因みに、英語の語彙力向上のためには、アルク社出版の”Power Words”という書籍を購入し、どこにでも持ち歩いて、暇があれば繰り返し繰り返し覚えるようにしていました。

初級から上級まで24冊に分かれて、12,000語が例文とともに記載されており、前半12冊は既知の単語が多かった為スキップしましたが、中級以上の12冊の内容は全て覚えました。

帰国後すぐにTOEICを受験した際、知らない単語はほぼないと感じたのですが、この書籍のおかげが非常に大きかったと思います。

中国語

中国語を勉強しようと思い立った具体的な理由については「50代で中国語の勉強をはじめた理由」で詳しく述べていますが、それとは別に、50歳を過ぎて新たな語学にチャレンジしようという気になったのも、根底にはフランス語の成功体験がありました。

年齢とともに記憶力が衰えるのは間違いないと思いますが、それでも同じような学習法で、同じように時間をかければ、同じくらいのレベルには到達できるという確信があったからこそ、取り組めたのではないかと思います。

日本に住んでいた為、フランス語・英語の学習時と比べると、環境面のアドバンテージはありません。

とは言え、インターネット、とりわけYoutubeのお陰で、例えばフランス語を学んだ90年代と比べると、日本にいても外国語の学習環境は格段に向上していました。

無料の素材がほぼ無限にあるのですから。

毎日、最低でも2時間勉強することを目標に、それに加え、当初は会話学校で、その後は家庭教師と、週に1回1時間のネイティブとの会話練習も行ってきました。

最終目標を中国語検定準一級に定め、かなり時間がかかってしまいましたが、2022年8月にその目標に到達することが出来ました。

中検準一級は、主催団体である「中国語検定協会」が”実務に即従事しうる能力の保証”と定義していて、一流大学の外国語専攻課程の卒業時の目標にされることもあるレベルです。(二級を目標にしている大学もあるようです。)

中国語を本格的に仕事で使ったことはありませんが、仮に今すぐ駐在に出ても、すぐそこそこの仕事は出来るのではないかと思っています。

外国語習得に必要な3つの肝 1.累計の勉強時間

ここまで私が3言語を習得してきた過程を書いてきました。

最後に、この経験を通じて、私が考える、”外国語習得に必要な3つの肝”についてまとめてみたいと思います。

最初に、身も蓋もないことを言わせていただくと、まず必要なのは累計の勉強時間です。

ざっくりとした計算ですが、私の場合、上述の水準に達するまでの勉強時間は、フランス語で1日16時間×180日(6カ月)=2,880時間、中国語で1日1.5時間×2,550日(7年)=3,800時間です。

※英語は、義務教育から含めると勉強期間が長すぎてちょっと計算のしようがないので、脇に置いておきます。

フランス語は、学校に通っていた期間は、ホームステイということもあり睡眠中を除いたほとんどの時間は言葉に接していたので1日16時間と仮定、中国語は毎日2時間を目標にしていたものの、ゴルフや飲み会等で全く勉強しない日もあったので、こんな感じかと思います。

中国語の時間が長くなっているのは、中検準一級というのが相当にマニアックな試験で、これを受けるためだけに2年くらいは専用の勉強を行ったのが大きな理由です。

体感的には、3000時間くらいの時点でフランス語と同様の水準には達していたように思います。

因みに、私は、自分の記憶力は、特別に良くも悪くもない標準的なレベルだと自認しています。

英語の習得に必要な学習時間をググると、専門家によっても意見は色々あるようですが、3,000時間くらいがひとつの目安のようなので、その点からも私が要した学習時間は、極端な外れ値ではないように思えます。

つまりはそういうことなのです。

外国語を習得するのには、まずは相当な時間を費やす必要があるということです。

「短期間で英語が身につく特別の方法」といった宣伝文句を見かけることがありますが、個人的にはとても信用できません。

外国語習得に必要な3つの肝 2.語彙力

次に重要なのは、これも当たり前すぎる話と思われるかもしれませんが、語彙力です。

ただ、巷には語彙力について2つ誤解があるように感じています。

ひとつは必要数、もうひとつは習得度合です。

まず必要数ですが、「5000語で話せるようになる」という記述を英語の参考書で見かけることがあり私の周囲にもこのレベルを目指す人が少なくないのですが、自信をもって話せると言うには、これでは残念ながら足りないと思います。

これらの数字の根拠にあるのは、”日常で使う言葉の数”という概念のようです。

ある研究結果では、一般的な文章に登場する単語数のうち、5000語でカバーしているのが、英語で93.5%、フランス語で96%、中国語で91.7%だそうです。(「日本語の語彙・意味」玉村文郎著、アルク)

確かにこれだけ見ると、5000語を覚えれば、何とかなりそうな気がします。

ですが、5000語では、その言語で書かれた新聞なり書籍なりを読んだ場合、知らない単語だらけ、というのが私の実感です。

そして、その見たことのない単語が文章全体のキーになっている、つまりその単語の意味がわからないと、文章全体として何について語られているのかがわからないということも少なくないのです。

日常会話で使用される単語数はもう少し少ないかもしれませんが、それにしても、少し幅広のジャンルについて、ある程度の知的な会話をしたり文章を理解しようと思うなら、1万語は必要というのが私の意見です。

ふたつめの習得度合ですが、「単語を目で見て、ちょっと考えれば意味を思い出す」レベルでは、会話では全く不十分にもかかわらず、それをもって習得したと認識している人が多いのではないかということです。

日本人は、学校の筆記テストでいい点数を取るということが外国語(英語)学習の出発点になるケースが多いことが、この原因のように感じます。

会話では、「耳で聞いて即座に理解できる」ことが最低限必要で、出来れば、自分でも発声でき適切な場面で使用できるというレベルになることが必要です。

1万語をこのレベルで習得できれば、かなり広範な話題について、ややつっこんだ会話を、そこそこ流暢に行うことが可能になると思います。

ちょっと語弊があるとは思いますが、文法は多少いい加減でも、特に会話なら何とかなります。(書くためには文法も必要ですけど)

これは勿論決して簡単に到達できる目標ではなく、その為にも、先の項目で書いたように2-3千時間の勉強時間を投入することが必要なのです。

外国語習得に必要な3つの肝 3.学習モチベーションの維持

最後に、これが一番根っこになる部分かと思いますが、学習モチベーションをいかに維持するかです。

私の場合、フランス語については、会社からの要求が強いモチベーションでした。

英語と中国語については、フランス語学習を通じて得た”努力さえ続ければいつかは必ず習得できるという信念”が、くじけそうなときの一番のモチベーションだった気がします。

何にせよ、1万語を、聞いて即座に理解し、適切に発話できるようになる為に、2-3000時間の勉強を続けるのは、多くの人にとって、並大抵のことではありません。

学習に対する強いモチベーションが必要です。

これを読んでくださっているあなたも、現在、何らかの語学の習得に励んでおられるかもしれません。

もし諦めそうになったら考えていただきたいのは、”努力を続ければいつかは必ず習得できる”というのは、誰にでも当てはまるということです。

まだ一番目の外国語を習得できていない方にとっては、実感が湧きにくいかもしれませんが、私に加え、多くの先達の成功事例もこれが事実であることを証明していると思います。

もしあなたがすでに強いモチベーションをお持ちの場合は問題ありませんが、そうでない場合、ぜひこのことを一つの励みにしていただければと思います。

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