”最強捜査機関”からの講師

監査関連情報

不正調査にも研修?

企業では、社外で開催される研修に社員を出席させたり、会社に外部講師を招いて講義をしてもらったりすることがあります。

会社の中だけで仕事をしていると視野が狭くなりがちですし、最新の情報や技術を仕事に採り入れたりすることによって、仕事の質を高めようとする訳です。

監査業界も例外ではなく、例えば“日本内部監査協会”といった一般社団法人があり、監査担当者向けの講座を開催してくれています。

講座の中身も割と細分化されていて、ニーズに合った研修を選べるようになっています。

不正に関する講座もありますが、私の印象では、不正防止の為のしくみづくりに関するものは豊富でも、発生した不正をどのように調査するのかとか、隠れている不正を見つける為にはどうすべきか、といった講座はあまり数が多くなかった印象です。

そこで、私の会社の監査部では、年に1、2回程度、不正調査もしくは不正発見を専門とする外部講師を招聘し、独自に部員向け講座を開催していました。

講師には、会計士や弁護士を選ぶことが多いのですが、あるとき、東京地検特捜部の元検事という弁護士の先生に来ていただいたことがあります。

今日はこのときのことについて話そうと思います。

“最強の捜査機関”出身の講師 

耳にされたことのある方も少なくないかもしれませんが、元検事の弁護士のことを“ヤメ検”と称するそうです。

検事を定年退職した方だけでなく、志を持って検事になったものの、激務であったり、数年おきに転勤があったり、公務員であることで収入に限界があることだったりが理由で、任期途中で民間の弁護士事務所に転職される方も一定数いるそうです。

日弁連の統計では、ここ数年は毎年50名前後が検事から弁護士になっています。

今回お話する先生は、東京地検の、それも特捜部の出身でした。

特捜部というのは、東京・名古屋・大阪の3つの地検だけに設置された特別な組織で、東京地検の場合、約40名の検事が在籍し、マスコミでは“日本の最強の捜査機関”と紹介されることもあります。

政治家の汚職や脱税等の際に活躍するケースが多く、最近では自民党派閥の裏金疑惑に対する捜査を行っていたことが報じられていました。

そんな強面のイメージがあった為、ネットでこの先生の情報を見つけ、社内講座の講師をお願いしようとしたときは、少し腰が引けていたかもしれません。

事務所にお伺いし実際にお会いしたところ、年齢は想像より若く40代前半頃、大変人当りのいい方で、ふたつ返事で依頼をお受け頂けました。

講師料については、具体的な金額は差し控えますが、予想していたよりはるかにリーズナブルと感じる額をご提示頂きました。

本当の専門家の凄み

講義は2時間程度でした。

大変中身が濃く、聞くだけの講義は、途中で眠気を催すことが少なくないのですが、この日は全くそんなことはありませんでした。

先生は、退官後は、色々な企業での不正案件を担当されており、幅広い実例を引き合いに出しながら、不正調査のポイントを説明してくれました。

また、事前に私の会社の事業内容をホームページで調べた上で、いかにもありそうな不正のケーススタディを用意してきてくれました。

そのケースを用い、初動の調査のポイント、ヒアリングのアポの取り方、複数名の関与者がいた場合のヒアリングの優先順位、ヒアリングで攻撃的な逆質問を受けた際の対処方法、等々、実践的な内容について、腹落ちのしやすい語り口で、ポイントを語っていただきました

終わってからの感想ですが、正直、本物の専門家はすごいなと思いました。

私も、既にいくつもの実戦の場数を踏んでいたんですが、知識や経験は比べ物になりません。

この先生の個人的な資質の高さに疑う余地はありません。

ただそれ以上に感じたのは、専門的な業務を行う組織(この場合は地検特捜部)が持つ専門家養成能力です。

元々優秀だったのに加え、それが検察・特捜部という組織の中で、さらに磨かれ、能力が高められていったであろうことが、経験談などの話の端々から感じられたのです。

司法試験を突破した優秀な頭脳の持ち主が一堂に会し、同僚同士または先輩から後輩へとノウハウを蓄積・伝達し合い、競争環境で互いに切磋琢磨していく、というのは、改めて考えると本当に凄いシステムだと思います。

昨今、事件捏造など検察のネガティブな側面がクローズアップされることもありますが、こうした専門家集団が日本の治安を守ってくれることへの安心も実感した次第です。

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