不正調査におけるヒアリングのテクニック

監査関連情報

証言こそ唯一の直接証拠

不正調査において、ヒアリングは非常に重要な役割を占めます。

一度ネットで調べたことがあるのですが、”直接証拠”というのは自白、ないしは、犯行の事実を目撃した人の供述を指し、それ以外の証拠は全て”状況証拠”であるそうです。

と言うことは、例えば、指紋のついたピストルも状況証拠なんですね。

意外でしたが、それだけ当事者の発言というのは重要だということでしょうか。

私の会社でも、懲戒等の処分を行う際には、それに先立って、不正当事者が供述した内容を書面にし、そこに本人の確認印を押させるということが必須でした。

ところが、ヒアリングで事実を正直に話してもらったり、罪を認めてもらうことは、多くの場合、とても難しいことです。

不正実行者は、何としてもそれを隠したいし、言い逃れしたいのです。

そこで、不正のヒアリングでは、様々な技術が必要になります。

今日は、そのヒアリングのテクニックについて監査部で学んだことを書いてみたいと思います。

ヒアリングはひとりずつ行う

ヒアリングがひとりだけで済むということはほとんどありません。

不正の実行者がひとりであっても、その周辺の人から話を聞くのは大切ですし、多くの場合有効です。

その際、ヒアリングはひとりずつ行うのが鉄則です。

効率を考えれば、関連する人を一度に呼んで同時に話を聞く方がいいに決まっています。

ただ不正監査では、当事者は勿論、周辺の人であっても、意図的に虚偽を述べようとする可能性が否定できません。

監査側は、虚偽を見抜くために、発言の矛盾を発見することが重要です。

同時に話を聞くと、その場で互いの話に辻褄をあわせることが出来てしまうので、矛盾を聞き出すチャンスが減ってしまいます。

また、元々は虚偽を述べる意図がなかったとしても、席上で別の人が自分の認識と異なる説明をするのを聞いて、口を閉ざしてしまったり、ときにはあまり悪気なく発言を変えてしまう人もいます。

同じ質問を投げたら同じ答えが返ってくるだろうとは思っても、わざと別の席で聞くようにします。

そうすると、そのうちの一人だけが違う事実認識を語りだすことは、経験上珍しくありません。

口裏合わせの余裕を与えない

不正当事者は、共謀者があれば勿論、そうでなくとも、周辺の少しでも事情を知っていると思われる社員に対して、必ず口裏を合わせようとします。

不正調査に不慣れな人は、「犯罪者という訳でもなし、まさか、うちの社員が口裏合わせなんてことはしないだろう」と甘く考えがちですが、人間誰しも自分の身は大切です。

口裏合わせが出来る余裕があれば、不正実行者は必ずそうしようとします。

監査側としては、可能な限りそれを防ぐ努力が必要です。

ヒアリングの呼び出しをする際、警戒させないために本来の狙いを伏せて別の理由を案内したり、複数名のヒアリングを続けて行うときは極力時間を空けず立て続けに行う、等します。

また、監査から呼び出しがあったということ自体を他人に口外しないよう念を押します。

ヒアリングのあとには、ヒアリングがあったことやその内容を口外しないことを約束させる念書にサインをしてもらいます。

ヒアリングを受けた人同士が情報交換するの防ぎ、不正実行者に口裏合わせをすべき相手を知られないようにするのです。

「全てを知られている」と思わせる

不正当事者は、監査側がどこまでの情報を掴んでいるのかに強い関心を持っています。

そして、多くの場合、監査側が掴んでいないなと感じる点については、とことん隠そうとします。

違う言い方をすると、監査側が掴んでいないと思うことを、親切に教えてくれる不正実行者はまずいません。

そこで、こちらは、「自分達は、実は既に全ての事実を知っている。ただ当事者であるあなたの口から真実を聞きたいのです」という雰囲気を演出するようにします。

それによって、相手に隠しても無駄だと思わせるように仕向けます。

その為、分厚い調査ファイルをこれ見よがしに手元に置く、「この件は既に3カ月にわたって調査しています」と冒頭に告げる、等、少し小細工的な手段を弄することもあります。

嘘をつきはじめたら、とことんつかせる

罪を逃れる為、咄嗟に嘘をつくのは、どんな人にもありうることだと思います。

見え透いた嘘を聞くと、うんざりします。

ですが、ヒアリングでは、相手が嘘をついているなと感じたら、それを遮ったりせず、どうせなら、とことん喋ってもらうようにします。

事実との乖離が大きければ大きいほど、後でその点を突けば、言い逃れが難しくなるからです。

また、不正実行者に真実を洗いざらい話してもらう為には、どこかの段階で、相手の心を徹底的に折ってしまうことが有効です。

その為にも、大嘘をつかせて、それを指摘することは役に立ちます。

まとめ

如何でしたでしょうか。

万が一、あなたが、何らかの取り調べを受けるような機会があったら、思い出してもらえると役立つかもしれません。

勿論、そもそもそんな羽目に陥らないように、真面目に暮らすのが一番大事なのですが。

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